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反アパルトヘイトの指導者釈放を祝ったコンサート
2004年04月16日(金) sun.gif
  “ネルソン・マンデラ・コンサート”がロンドンのウェンブリー・アリーナで開催(1990)

 ほんの10年ほど前まで、南アフリカ共和国では、白人政府によるアパルトヘイトと呼ばれる人種隔離政策が行われていました。参政権の剥奪、白人と黒人の結婚を禁じ、居住区も分け、公共施設や教育の場までも別にするという、徹底した人種差別を国が行っていたのです。反対する黒人には弾圧が加えられ、ANC(African National Congress=アフリカ民族会議)の指導者ネルソン・マンデラが逮捕・投獄されたのは1962年のことでした。

 もちろんこの政策には国際的に非難が集まり、経済制裁などが南アフリカに対して行われ、ロック界からも行動を起こすアーティストたちが現れます。まずピーター・ガブリエルが、反アパルトヘイト運動の指導者で拷問によって30歳の若さで死んだスティーヴン・ビコのことを歌った「ビコ」を発表し、悲惨な現状を訴えました。さらに85年には、世界中のアーティストが集まり、アパルトヘイトの抗議アルバム『サン・シティ』を発表します(サン・シティとは南アフリカにあった白人専用リゾートの通称で、アパルトヘイトを象徴する街)。ガブリエルをはじめ、マイルス・デイヴィス、U2のボノ、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、ホール&オーツ、ジャクソン・ブラウン、ラン-DMCら人種・国籍を超えた大物たちが、人種差別に対して敢然と異議を唱えるアルバムを発表したことは、世界中のロック・ファンにこの問題を知らしめる大きな役割を果たしました。

 89年、フレデリク・デクラークが南アフリカ大統領に就任し、風向きが変わりました。デクラークはアパルトヘイト撤廃を約束し、90年初めにネルソン・マンデラを釈放。これを受けて4月16日、ロンドンのウェンブリー・サッカー・スタジアムで「釈放記念コンサート」が催されました。ボニー・レイット、ネヴィル・ブラザーズ、シンプル・マインズ、ミリアム・マケバ、ピーター・ガブリエル、アニタ・ベーカー、トレイシー・チャップマンらが出演し、7万人を超える観衆と、招待されたネルソン・マンデラとともに、28年ぶりの釈放を祝いました。マンデラはコンサートの途中30分にわたって、「南アの刑務所の厚い壁を通して私たちは聞いた。私たちの釈放を求めるあなたたちの声を。人間性に反する黒人差別はいまもいたるところにある。殺人と抑圧が続いている。毎日、南ア中に孤児を生んでいる」と訴え、そのメッセージはテレビ中継を通して30カ国10億人の視聴者に流れました。

 その後91年、デクラーク政権はアパルトヘイトを撤廃する法律を承認し、アパルトヘイトはその歴史に終止符を打ったのです。
 



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