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フランスの作曲家、エミール・ワルトトイフェル没(1837〜1915)
2004年02月12日(木) sun.gif
  冬のスケート場に欠かせない音楽といえば・・・

 数多いクラシック曲の中には、演奏会やレコードなどで聴かれるためだけでなく、日常生活に密着し、実用音楽として定着してしまった曲が幾つかあります。例えば結婚式に欠かせないメンデルスゾーンやワーグナーの「結婚行進曲」。葬儀の際のベートーヴェン、ショパンの「葬送行進曲」。スポーツの表彰式におけるヘンデルの「見よ、勇者は帰る」といった曲です。ワルトトイフェルの「スケーターズ・ワルツ」も、まさにそうした曲の一つ。スケート場にとっては欠かせない実用音楽といっても過言ではないでしょう。

 作曲者エミール・ワルトトイフェルは、ストラスブール生まれのドイツ系フランス人で、パリ音楽院に学んだあと、まずナポレオン三世の皇后ユージェニー妃付のピアニストとなり、1865年、28歳で「宮廷舞踏楽長」の地位を得ました。しかし、今日演奏されるような彼のワルツが作られるようになったのは1867年のパリ万国博覧会以降のこと。この万博で、「オーストリア帝国宮廷舞踏楽長」ヨハン・シュトラウス2世の演奏するワルツが大好評を博し、ヨーロッパ中にワルツ・ブームが巻き起こったのです。といっても、リズミックでテンポの動きの激しいウインナ・ワルツをそのまま真似るのではなく、もっと穏やかで優美な、誰にでも受け入れられるようなメロディでワルツを書いたことが、ワルトトイフェルの曲が今も生き残っているポイントでしょう。

 例えば、前述の「スケーターズ・ワルツ」。当時、パリの上流社会の人々の間で大流行していたスケートに興じる男女の姿を描いた作品ですが、この曲の付点二分音符と四分音符を中心とした大らかなメロディと安定したリズム感は、スケートの初心者でも安心して身を任せられる穏やかなもの。もし、スケート場のBGMが八分音符を多用するリズミックなウインナ・ワルツだったら、フィギア・スケートの上級者はともかく、初心者はテンポに乗り切れずに、あちこちで尻餅をついてしまうでしょうから…。
 



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