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ロックにフルートという楽器を持ち込んだ「狂気のフラミンゴ」
2004年08月10日(火) sun.gif
  ジェスロ・タルのボーカル/フルート奏者、イアン・アンダーソン誕生(1947〜)

 日本ではあまりなじみのない名前かもしれませんが、70年代から今日までアメリカやイギリスではたいへんな人気を誇るバンド、ジェスロ・タル。その中心人物のイアン・アンダーソンは、1947年にスコットランドのエジンバラで生まれました。一家は彼が幼いころにリバプールの近くのブラックプールという街に引っ越し、後にビートルズに影響されて地元でバンドを組んだ彼は、あのビートルズが出演していたことで有名なキャバーン・クラブにも出たことがあるとか。バンドはメンバー・チェンジを繰り返して、68年にジェスロ・タルとしてデビュー。ちなみにジェスロ・タルとは、17〜18世紀にかけて実在したイギリスの農学者で、種子の列蒔きを提唱して馬力種蒔き機を発明した、イギリス農業史における重要人物だということです。

 最初のころのバンドは、当時ありふれていたブルース・ロック・バンドでしたが、イアン・アンダーソンがフルートというロックには珍しい楽器を持ち込んだことに加え、彼のユニークな音楽性〜サウンドはアコースティックでも楽曲はコンセプチュアルでプログレッシブ〜が徐々に本領を発揮して、中世の暗い森を思わせるような、陰気で重々しい独特の音世界を作り上げていきます。ファースト・アルバム『日曜日の印象』は全英トップ10入りし、68年度の音楽紙の人気投票ではビートルズに次ぐ2位に輝きました。中世の吟遊詩人のようなタイツとマントに身を包み、ピンと片足で立って激しく身をくねらせながらフルートを吹きまくるイアン・アンダーソンは「狂気のフラミンゴ」と呼ばれ、ライブ・パフォーマンスでも観客を圧倒。73年の名作アルバム『アクアラング』に収録された「蒸気機関車のあえぎ」は、ジェスロ・タル・ロックの極め付きと言われています。

 ちなみに、イアン・アンダーソンはもともとボーカルとギターを担当していました。しかし、デビュー当時在籍していたギタリストを売り出すために、プロデューサーがイアンからギターを取り上げてしまいました。ライブのとき、ソロの間に手持ちぶさたに感じた彼は、早速楽器屋に行って店員にこう尋ねました。「バイオリンとフルートはどっちが簡単かな?」「多分フルートじゃないですか」…こうして彼はロック界初のボーカル&フルーティストとなったわけですが、もしこのとき店員がバイオリンのほうを勧めていたら、彼とジェスロ・タルの運命はどうなっていたのでしょうね?
 



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