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ピアニスト/指揮者、ヴラディーミル・アシュケナージ誕生(1937〜)
2004年07月06日(火) sun-or-crowd.gif
  華麗なる二足のわらじを履く、練習魔

 人気実力とも最高の現役ピアニストのひとり、ヴラディーミル・アシュケナージ。完璧な技巧による美しい音色と、曲の隅々まで神経を行き届かせた正統派の解釈で、ベートーヴェン、モーツァルト、ショパンといった定番のレパートリーから、ラフマニノフ、スクリャービンなどのロシア物まで、数多くの名盤・名演奏を聴かせてくれています。また1970年頃からは指揮者としても活躍し、R.シュトラウスの交響詩やプロコフィエフのバレエ音楽などで色彩感あふれる名演を披露。その、決して偉ぶらないステージ・マナーからも伺える素朴で誠実な人柄も、世界中のファンから愛されています。

 アシュケナージは1937年に旧ソ連のゴーリキーで誕生。演芸などの伴奏をするピアノ芸人だった父親の影響もあり、幼い頃からピアノの才能を見せ始めました。モスクワ音楽院で学び、18歳でエリザベート国際コンクール、25歳でチャイコフスキー国際コンクールと次々に優勝を果たします。その翌年にソ連を離脱。妻と子どもたちを連れイギリスに移住し、現在はスイスのルツェルンで暮らしています。ちなみに夫人と長男もピアニスト、次男はクラリネット奏者という音楽一家です。

 どんな時も毎日ピアノを弾くという練習魔のアシュケナージ。音楽ひとすじの人生ですが、唯一の趣味は読書で、なかでもスパイ小説が好きといいます。実は学生時代にKGB(旧ソ連の国家保安委員会)から協力を要請されたことがあるとか。外国からの留学生の情報提供を求められた彼は、留学生にとって不利なことは決して言わなかったそうです。共産圏と西側との対立を描くスパイ小説に興味をひかれるのは、そんな体験のためかもしれません。

 さて最近のアシュケナージは、ピアノより指揮活動のほうに時間を割いているようですが、ピアノを離れるつもりはないと断言しています。2000年2月の来日の折りも、モーツァルトの協奏曲をピアノで弾きながら指揮もするという“弾き振り”を披露。見事な一人二役で、聴衆をすっかり魅了しました。華麗なる二足のわらじで、いつまでも活躍し続けてほしいものですね。
 



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