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ヴェネチア国際映画祭 <第60回>
2003年09月09日(火) sun.gif
  金獅子賞・グランプリ
ザ・リターン(原題)

監督:アンドレイ・ズウァーギンツェフ
出演:ヴラディミア・ガラン、イワン・ドブロラヴォフ、コンスタイン・ラヴォレンコ
ロシアに住む兄弟の元へ、突然、失踪していた父親が出現。「なぜ今ごろ…?」と思いながらも親子3人旅に出て、しだいにわだかまりが解けていくという人間ドラマ。兄弟役の兄の方が、映画祭2か月前に水死するという悲劇が起こり、監督は授賞式で「この賞は彼にささげる」と涙を流した。監督はこれがデビュー作で、新人監督賞(ルイジ・デ・ラウレンティス賞)も受賞。稚拙(ちせつ)さもあったが、審査員は彼の将来性を買ったようだ。

審査員特別賞・銀獅子賞
レ・セーフ・ボラント(原題)

監督:ランダ・シャール・サバージ
出演:フラビア・ベキャラ、マール・ブサイベス、ジャド・ラハバニ
ある一族が住む村に突然、さくができてしまい、彼らはレバノン側とイスラエル側に分断。拡声器を使って親族の近況を知らせる(娘の初潮まで!)という、コミカルに社会情勢を描きつつ、主張すべきことは主張するぞという社会派ドラマ。監督いわく「映画祭の力を借りてブッシュが世界を2つに割ってしまったということを主張した」という。設定は面白いのだが、批評家のなかでは「中だるみする」「テンポがない」という声も。

特別監督賞・銀獅子賞
座頭市

監督:北野武
出演:ビートたけし、浅野忠信、大楠道代、夏川結衣、ガダルカナル・タカほか
勝新太郎の当たり役を北野武流にアレンジした痛快時代劇。北野監督自ら演出をつけた殺陣シーンに、ヴェネチアの観客たちは熱狂。非公式ながら、一般人の投票による観客賞を受賞したほか、おそらく、「ゲームを見ているような感じにしたかった」というCG処理で過剰に量を増やした血しぶきシーンが評価され「デジタル・アワード」も受賞した。“雇われ仕事(北野監督談)”をきっちり仕上げた職人監督としての腕を評価されたのでは。

個人貢献賞(脚本に対して)
ボンジョルノ、ノッティー(原題)

監督:マルコ・ベロッキオ
出演:マヤ・サンサ、ルイージ・オ・カッチョ、ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ
イタリア版『KT』といえる内容で、イタリアで実際に起こったモロ元首相誘拐事件に迫った社会派サスペンス。観客が挙げた北野に対し、批評家が金獅子賞候補として挙げたのがこの作品。あまりの下馬評の高さに加えて、今回の審査委員長がともにイタリア映画界を支えてきたマオリ・モニチェッリ監督ということもあり、ベロッキオ監督も相当期待していたのか意外な受賞結果にご不満(?)で、授賞式には主演男優のルイージが代理として出席した。
(文:中山治美)
 



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