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映画監督アルフレッド・ヒッチコック誕生(1899〜1980)
2004年08月13日(金) sun.gif
  サスペンス映画の傑作を彩った名曲の数々

 1899年の夏、丸々太った元気な赤ん坊がロンドンで生まれ落ちました。この子こそ、長じてはハリウッドで数々の傑作を仕上げ、スリラー、サスペンス映画の神様と言われた映画監督ヒッチコックです。彼の映画は、どれも巧みな語り口で見る者を捉えて離しませんが、実はその面白さの秘密のかなり大きな部分を、音楽が担っているのです。

 例えば『知りすぎていた男』(1956)では、主演女優でもあるドリス・デイの有名な歌「ケ・セラ・セラ」が、誘拐された息子を捜す重要な鍵となりますし、クライマックスのイギリス首相暗殺シーンは、ロイヤル・アルバート・ホールに於けるロンドン交響楽団演奏会を舞台にしています。また、ミステリーの中にロマンスをたっぷり盛り込んだ『めまい』(1958)では、情感溢れる管弦楽を豊かに鳴らしたのに対し、異常な殺人を描く『サイコ』(1960)では、白黒の画面に合わせ、モノトーンの弦楽合奏が、非情な冷たさで緊迫を盛り上げていきます。それどころか、『鳥』(1963)では、当時の常識に反し、本編から音楽を完全に排除することさえしています。

 これらの作品は全て作曲家バーナード・ハーマンが音楽を付けていますが、他にもディミトリー・ティオムキン、フランツ・ワックスマン、ジョン・アディスン、ジョン・ウィリアムズなど、第一級の映画音楽作曲家と組んでいるところを見ても、ヒッチコックがどれだけ音楽を重視したかが分かりますね。

 なお、ヒッチコックといえば、日本でも1957/63/85年と放映されたテレビ・シリーズ『ヒッチコック劇場』(1955-62)を思い出される方もいらっしゃるでしょう。番組の冒頭にヒッチコック自身が登場する、とぼけた味わいのこのサスペンスドラマのテーマ音楽は、19世紀フランスの作曲家グノーの「操り人形の葬送行進曲」という曲。ちょっとグロテスクでユーモラスな感じの曲想が、まさにドラマにピッタリでした。
 



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