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“マイルスの知恵袋”と呼ばれたアレンジの天才
2004年05月13日(木) rain.gif
  アメリカのジャズ・ピアニスト/作・編曲家、ギル・エヴァンス誕生(1912〜1988)

 モダン・ジャズ史上最も優れた作曲家/アレンジャーと呼ばれるギル・エヴァンス。その天才ぶりは少年時代から際立っていました。音色に対する感覚の鋭さと記憶力は抜群で、背後から走ってくる自動車の名前をエンジン音だけで当てるなど朝飯前。ルイ・アームストロングやベニー・グッドマンら、当時人気のビッグ・バンドを聴きあさり、一度聴いたメロディーはすべて記憶していたといいます。音楽を志した後も、「型にはめられて自分の能力が限定されるから」と正規の音楽教育は受けずに、ジャズに限らずクラシック、近代音楽まで、ラジオとレコードを教師として独学で音楽理論を身に付けてしまったとか。独学でも、その理論がいかに優れたものであったか、また彼の才能がいかにすごいものだったか、それは後の活躍ぶりが証明しています。

 1941年、無名のダンス・バンドからクロード・ソーンヒル楽団の編曲者に抜擢されたギル・エヴァンスは、いよいよその才能を発揮し始めます。フレンチ・ホルンやチューバを大胆に導入し、精妙な音色の変化でビッグ・バンドのアレンジに革命を起こした彼は、40年代半ばにはビ・バップの大御所、チャーリー・パーカーのアレンジも手掛ける売れっ子となりました。そして49年に、マイルス・デイヴィスの『クールの誕生』でジャズの新時代を開いたのですが、天才ゆえの気まぐれか、ジャズを離れてラジオの仕事を始めてしまいます。しかし57年に再びマイルスと組んで『マイルス・アヘッド』を発表。以後“マイルスの知恵袋”として、『ポーギーとベス』『スケッチ・オブ・スペイン』など、数々の名作を手掛けていくのです。

 マイルス以外にも自らのオーケストラを率い、またケニー・バレルやアストラッド・ジルベルト、さらには元 ザ・バンドのロビー・ロバートソンやスタイル・カウンシルといったロック・アーティストの作品まで、新しいサウンドを求めて実験を続けてきたギル・エヴァンス。88年3月に71歳で他界しましたが、彼が音楽に果たした功績は果てしなく大きなものでした。
 



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