個別表示

淡い感傷味を持つ田園喜劇の名作
2004年05月12日(水) sun.gif
  イタリアの作曲家、ガエターノ・ドニゼッティのオペラ『愛の妙薬』初演(1832)

 19世紀後半、イタリアにはヴェルディ(1813〜1901)というオペラの巨人がいました。では19世紀前半を代表するのは誰でしょう? 答は、ロッシーニ(1792〜1868)、ベリーニ(1801〜1835)、そしてドニゼッティ(1797〜1848)の三羽ガラスです。特にドニゼッティは、ロッシーニの機知に富んだオペラと、ベリーニの旋律重視の抒情オペラの影響を受け、ロマン派歌劇の開拓者となったのでした。

 その彼のオペラの中でも、喜歌劇『愛の妙薬』は、狂乱悲劇『ランメルモールのルチア』と並んで今でも良く上演されます。のどかな農村に「惚れ薬」を売りに来たインチキ医者が巻き起こす恋と騒動を描くもので、ロッシーニならシュールなほどナンセンスなギャグで笑い飛ばすところを、ドニゼッティは持ち前の美旋律で、ロマンの香り漂う美しい牧歌劇としています。

 ところで、ドニゼッティには特技がありました。オペラの早書きです。『愛の妙薬』は上演に約2時間かかりますが、これをわずか2週間で書き上げています。出世作の『アンナ・ボレーナ』(1830)は約1ヶ月、『ランメルモールのルチア』(1835)には珍しく6週間もかけましたが、『連隊の娘』(1840)の第2幕に至ってはたった4時間で完成したと言われます。

 前述のロッシーニも速筆で有名でした。彼はあの『セビリャの理髪師』を13日で書き上げましたが、「13日でオペラを書けるものですか?」と聞かれたドニゼッティは、「そりゃ書けるさ。奴は怠け者だから」と答えたそうです。これは「手抜きをすれば早く書ける」という意味とも取れますが、ドニゼッティの仕事ぶりからすると、「怠け者だから13日もかかるのだ」ということかも知れませんね。
 



- Web Diary Professional ver 2.28 -