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ソウル・シンガー、ジェームズ・ブラウン誕生(1933〜)
2004年05月04日(火) sun.gif
  エネルギッシュな「ファンクの帝王」

 ゴッドファーザー・オブ・ソウル、ファンクの帝王、ミスター・ダイナマイト……さまざまな称号で呼ばれる黒人ボーカリスト、“JB”ことジェームズ・ブラウン。その半世紀を軽く超える芸歴の長さもさることながら、ファンクという新しい音楽を生み出し、世界中に影響を与えた功績で、ビートルズやマイルス・デイヴィスともに、20世紀の音楽における最も重要なアーティストの1人に数えられるでしょう。

 サウス・カロライナの貧しい家庭に生まれたJBは、5歳のときに叔母に引き取られますが、叔母の家は俗に言う売春宿でした。客を相手にダンスや歌を披露して小金を稼いだり、ときには客引きもしていたというJBは、10代になるといっぱしの不良少年に成長します。しかし15歳のとき、車の窃盗で2度目の逮捕を受けたことで、彼の運命が変わります。刑期は8〜16年という重いものでしたが、彼は当局に仮釈放の嘆願書を書きました。「神に人生を捧げるためにゴスペルを歌いたい。もちろんちゃんとした仕事について一生懸命働きます」。刑務所内でゴスペル・グループを組み、“ミュージック・ボックス”とあだ名されるほど、音楽に対しての真面目な姿勢が評価されたのか、19歳で仮釈放されたJBは、歌手への道を歩み始めることになったのです。

 56年に「プリーズ・プリーズ・プリーズ」でデビューしてしばらくは、当時の黒人ソウル・シンガーの主流だったバラードを中心にしていたJBですが、64年の「アウト・オブ・サイト」で初めて、後にファンクと呼ばれることとなる横ノリ(※)の16ビート・サウンドを試みます。さらに続く「パパのニュー・バッグ」「アイ・ゴット・ユー」「コールド・スウェット」と、ますますファンキーなリズムを追求し、70年の「セックス・マシーン」(あの有名な“ゲロンパ!”ですね)で、ついにその様式を完成させます。メロディを排し、リズムに乗せてスタッカートでシャウトするボーカルに、細かいリズムを刻むギター、短く切ったホーン・リフ、そしてトグロを巻くようなベース・ライン。まさに本能を刺激するサウンドは、アメリカだけでなく世界の様々な音楽シーンに影響を与え、以来JBの名はファンクの帝王として世界中から尊敬を集めているのです。

 そんな大物だけに破天荒なエピソードも多く、奥さんとのトラブルから警察を呼ばれ、駆け付けた警官とサウス・カロライナからジョージア州までのカーチェイス、さらには銃撃戦まで演じて6年間の懲役を受けた話は有名ですが、しかもそれが88年、55歳の時のことなのですから驚きです(91年に仮釈放されました)。2003年には古希(こき=70歳)を迎えるJBですが、今でも激しく踊りながらシャウトする3時間以上ものステージをこなしており、まだまだ帝王の座を譲る気配は全くなさそうです。

※横ノリ=音楽のビート感・グルーブ感を形容する俗語。「縦ノリ」と対で使われる。体が横に揺れるような(くねるような)気持ちよさ(主に4/16ビート系ソウル、ジャズなど)と、縦に飛び跳ねるような気持ちよさ(主に8ビート系ロックなど)の違いから来た表現。
 



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