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フランスの作曲家、オリヴィエ・メシアン没(1908〜1992)
2004年04月28日(水) sun.gif
  色彩と禁欲と官能の現代作曲家

 皆さんの中には「現代音楽」と言うと、「わけが分からない」「理屈ばかりで楽しくない」などの先入観を持たれている方もいるのでは? でも、食わず嫌いはいけません。ときには同時代の作曲家の音楽にも耳を傾けてみましょう。例えば、オリヴィエ・メシアンの作品群はいかがでしょうか。彼の作品も、通常の調性やハーモニー、リズムを捨て去った、いわゆる「現代音楽」「前衛音楽」であることに違いはありません。にも関わらず、その作品は神秘的な中にも独特の色や香りが漂い、鳥の声を通じた自然との交流も感じられます。いわば「知」と「情」のバランスがとれた現代音楽作曲家−−それがメシアンです。

 メシアンはドビュッシーの強い影響からスタートして、独特の音階・ハーモニー、それにリズム周期を持つ個性的な作風に到達します。この時期の作品は、「世の終わりのための四重奏曲」「嬰児イエスに注ぐ20の眼差し」など、カトリック神秘主義に支配されています。しかし第2次大戦後はがらりと作風を変え、官能的・肉感的で異教的ですらある大作「トゥーランガリラ交響曲」を発表しました。この背後には女流名ピアニスト、イヴォンヌ・ロリオとの不倫の恋があるともいわれています。カトリック信仰と恋愛感情に引き裂かれた苦悩から生まれたこの作品は、極彩色でむせ返るような愛の歓喜に満ちています。一方では、精緻な前衛音楽理論をとことんまで追求したピアノ曲「音価と強度のモード」を発表して、現代音楽界に衝撃を与えました。

 その後メシアンは鳥の鳴き声を音楽的に採譜することに没頭し、来日の際もせっせと日本の鳥の歌声を集め、ピアノと楽器群のための「七つの俳諧」に仕上げています。晩年にはカトリシズム、官能性、そして鳥の声を総合した作品を書き、前衛的ながらもうっとりするほど美しい響きを残しながら、1992年の今日、天に昇ったのでした。
 



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