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怒りん坊の“チャーリー”ミンガス
2004年04月22日(木) sun.gif
  アメリカのジャズ・ベーシスト、チャールズ・ミンガス誕生(1922〜1979)

 チャールズ・ミンガスはモダン・ジャズ史を代表するベーシスト/グループ・リーダー/作曲家の一人です。彼がシーンで活躍したのは1950年代半ばから70年代にかけてで、この間ジャズにはハード・バップ/クール/ファンキー/フリー・ジャズなどさまざまなスタイルが生まれましたが、強烈な個性と主張に彩られたミンガスの音楽は、こうした分類に収まりきらず“ミンガス・ミュージック”と呼ばれました。比較的大人数(5人〜10人位)で、堅固な曲構成の中でエネルギッシュなアドリブを繰り広げるミンガスの音楽は、聞き手にもかなりの緊張を強いますが、一度とりつかれると他の音楽では物足りなくなるほどの魅力を秘めています。

 彼は人物的にもユニークで、怒りっぽくケンカっ早いことでも有名でした。「オレのことをチャーリーという愛称で呼ぶな!」とマスコミに食ってかかったり、取るに足らない理由でバンドのメンバーを殴って歯を叩き折ったこともあります。もちろん、正義感から怒りをあらわにすることも多く、アルバム『ミンガス・プレゼンツ・ミンガス』の「フォーバス知事の寓話」という曲では、人種差別主義者として知られる実在の人物を名指しで誹謗中傷しています。いろいろとトラブルの多い彼ですが、中でも“ファイブ・スポット事件”は、怒りん坊ミンガスの面目躍如たるものでしょう。

 50年代のある夜のこと、ミンガスのグループは有名なジャズ・クラブ「ファイブ・スポット」に出演していました。しかし当時のジャズ・クラブというのは、音楽を聴くというよりも、お酒を飲んで騒ぐ場所。とりわけこの夜は、ジャズには何の関心もないような白人の集団が店を占拠し、ワイワイガヤガヤとおしゃべりに興じていたのです。しばらくのあいだは黙って演奏していたミンガスですが、ついにプツンと切れてしまいました。彼は演奏を中断し、マイクに歩み寄ると、「あんたたちはいったい音楽を聴く気があるのか。おしゃべりがしたいんだったらよそでやってくれ。音楽を聴きにきているファンに迷惑だろう!」と怒りをぶちまけたのです。客席が一瞬にして静まりかえったのは言うまでもありません。
 



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