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ロック・シンガー、イギー・ポップ誕生(1947〜)
2004年04月21日(水) sun-or-crowd.gif
  パンクのゴッドファーザー

 ギターを壊したり、燃やしたり、はたまたニワトリの首を切ったりと、ロックには過激なステージ・パフォーマンスで有名なアーティストは多いですが、過激さ、痛さでは文句無しにトップなのがイギー・ポップでしょう。何せ、刃物で皮膚を切り裂いたり、熱いロウを頭からかぶったり、ガラスの破片をステ−ジにバラまいてその上を転げ回り、ついには救急車で運ばれたという伝説の持ち主なのですから。

 47年にミシガン州で生まれたイギー・ポップは、もともとドラマーとしてブルース・バンドで演奏していました。しかし67年、ジム・モリソン率いるドアーズに衝撃を受けて、自ら歌うことを決意し、ストゥージズを結成します。サイケデリックが全盛の時代に、シンプルなリフとコードで直線的に押しまくる演奏は、まさに早すぎたパンクと呼べるものでした。69年に『イギー・ポップ・アンド・ストゥージズ』でデビュー。耳をつんざくような轟音ギター、「アイ・ワナ・ビー・ユア・ドッグ」「サーチ&デストロイ」といった破滅的なメッセージ、のたうち吠えるイギーのボーカル、そして前述したような過激すぎるパフォーマンスによって、一躍彼らはカルト・ヒーローとなったのです。

 しかし、そうした常軌を逸した行動の影にはやはりドラッグがあり、中毒が末期症状に達したイギーは74年に治療のため入院させられ、バンドは解散。その後、一時は路上生活まで送っていたといいます。どん底のイギーに、救いの手を差し出したのは、かねてからイギーを敬愛していたデヴィッド・ボウイでした。77年、「チャイナ・ガール」(後にボウイによるカバー・バージョンが大ヒット)をはじめボウイと共作したアルバム『イディオット』をリリース。折しも世界中をパンク・ブームが席巻し、古い音楽に否定的な発言ばかりのセックス・ピストルズさえ、ストゥージズを讃える発言をしたこともあって、見事にカムバックを果たしたのです。

 パンクの波が引いた80年代は彼にとってあまり良い時代ではありませんでしたが、90年代以降は、新しいパンクと言えるグランジ・ブームが起こり、再びイギーに注目が集まり始めます。50歳をとっくに越えた今もなお、ひとたびステージに立てば、アンプによじ登り、マイクを振り回し、客席にダイブを繰り返すイギー・ポップ。「パンクのゴッドファーザー」と呼ばれ、若いバンドから一目も二目も置かれる存在なのです。
 



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