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アメリカのギタリスト、ライ・クーダー誕生(1947〜)
2004年03月15日(月) sun.gif
  ギターの名手にして古い音楽を蘇らせる“案内人”

 ライ・クーダーは単なるギタリストというより、今では埋もれてしまっている古い音楽を、確かなギター・テクニックで現代に蘇らせる“案内人”といったほうが適切かもしれません。2000年1月に公開された話題の映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』でも、現在は一線を退いている往年のキューバのミュージシャンたちを捜し出して共演し、伝統のキューバ音楽の魅力を伝えてくれています。

 1947年ロサンゼルスで生まれたライは、少年時代から古いカントリー・ブルースやソプラノにのめり込み、熱心にスライドギターやオープン・チューニング、フィンガー・ピッキングといった奏法を学びました。有名なブルース・ミュージシャンがライブに来たとき、ライ少年は宿まで押しかけ、なけなしの小遣いの5ドルを払って自分の目の前で演奏してもらったといいますから、その探求心は並々ならぬものがあります。60年代後半から作編曲家のジャック・ニッチェの元でセッション・ミュージシャンとしてキャリアを積み、ローリング・ストーンズのレコーディングにも参加。そのギター・プレイはキース・リチャーズに大きな影響を与えました。そして70年にソロ・デビューを果たし、初期のアルバムでは1920年代末〜30年代のいわゆる“不況ソング”を中心にしたフォークやカントリー・ブルースを、当時にうまく蘇らせました。 以後、テックス・メックス、ハワイアン、20年代のジャズ、ソウルやR&Bから沖縄の音楽(喜納昌吉やネーネーズのアルバムにも参加)に至るまで、時代や国境を越えてさまざまな楽曲を紹介し続け、日の当たらない音楽を蘇らせる“案内人”として高く評価されるようになったのです。

 80年代からは映画のサウンドトラックも数多く引き受けており、その代表作がヴィム・ヴェンダース監督の84年度作品『パリ、テキサス』。古いブルース曲「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」をモチーフに、アコースティックのスライドギター1本で、無口な主人公の心情を見事に表現した名演を披露しています。ソロ名義の作品が85年以来ごぶさたなのはファンにとっては複雑なところですが、90年代も『ジョニー・ハンサム』や『エンド・オブ・バイオレンス』といったサントラや、97年のグラミーでトロピカル・ラテン・アルバム賞を受賞し、同名の映画が作られるきっかけにもなった『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など、完成度の高い作品を精力的に発表。一般のファンはもちろん、多くのミュージシャン仲間から高く評価されている“ミュージシャンズ・ミュージシャン”の一人、といえるでしょう。
 



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